熱処理知識の泉

オーステンパ・ADI処理

概要

変態点以上に加熱後、300℃~500℃のソルトバスの塩浴し、等温保持する処理をオーステンパ(ADI)といい、硬さと靭性のあるベイナイト組織が得られる。
普通の焼入れとオーステンパ(ADI)の冷却を比較すると下図のようになる。

図a.普通の焼入れ
図b.オーステンパ(ADI)

オーステンパ(ADI)は焼戻しの必要がなく、歪や焼割れのが防止できるという利点がある。
高めの温度【図b 記載 (1)】では靭性の高い上部ベイナイトとなり、
低めの温度【図b 記載 (2)】では硬さの高い下部ベイナイトとなる。
オーステンパ(ADI)は機械的性質向上を目的としてFCD(球状黒鉛鋳鉄)で利用される事が多い。

熱処理方法

オーステンパ(ADI)の一般的な熱処理パターンは次の通り

処理別の球状黒鉛鋳鉄における機械的性質
引張強さ[MPa] 耐力[MPa] 伸び[%]
鋳放し 450~500 ≒250 10~12
焼入・焼戻 600~700 ≒370 3~8
ADI(FCAD1000-5) 1201 837 10.2

金属写真

球状黒鉛鋳鉄(鋳放し)
球状黒鉛鋳鉄(ADI)